各分科会からの提言
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A-3「デザインの専門教育:デザインで学び問うこと」
(C) The International Conference of Design for Sustainability
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はじめに
コーディネーター/植松氏:社会のあらゆることに関わるデザイン。 しかし、これまでのデザイナーの目はサステナブルな社会に向けられていたでしょうか?サステナブルな社会へ目を向けるためには教育者こそ、サステナビリティを学び問うべきでないでしょうか?
これまでのデザインの教育を反省し、これからの社会のためのデザイン教育について考え、デザインを専門とする教育を、サステナビリティを基礎としたものとして強化、再編に着手します。
大変熱心な、特に教育の実働に関わっている方々も多く参加され、具体的な実践に関する論議がされたのではないかと思います。
プレゼンテーション内容
分科会のプレゼンターは東京造形大学の益田文和教授、名古屋工業大学の木村徹教授、桑沢デザイン研究所の本田圭吾先生です。
益田教授は、日本で初めてサステナブルとい専攻を作られました。この時の大きなミッションで、学科ではなくプロジェクトとして作ったことが挙げられます。サステナビリティとは一つの学科ではなく、共通するプロジェクトであり、プロジェクトとしての教育をしていきたいということです。サステナビリティの考え方を社会や生活、ものづくりにおいて、どう生かしどう変えていくのかを問い、あらゆるカテゴリー、マテリアルを基盤にどう集結していくのか、学生さんとの研究やワークショップを通してデザインを広域に捉える中で、サステナビリティを一つの切り口とし行動することで解読しています。
次に観点を変えまして、木村教授は工学とアートという新しい視点を持っておられます。ものを融合するという基本の考えは極めて正しく、サステナビリティに対する工学からの切り口、またプロデュースする人を作っていくというアプローチは大変重要です。
本田先生の桑沢デザイン研究所の考え方は、ナレッジマネジメントと一線を画すやり方で、新しいものへチャレンジし活動をなさっています。デザインは教育だけではなく、これからはプロデュースできる人を育成し、多様性の中でどう両立させていくかが必要となってきます。
ディスカッションで討議されたキーワード
様々な論議がありましたが、ディスカッションのポイントをご紹介します。
- デザイン教育はデザイン教育ではない
- 研究機関としてのあり方:例)大学→研究機関、専門学校→スキル(デザイン教育、ピンポイントのスキル、スキルアップに変換→広い意味で)
- 学生に対して:多様性に満ちた社会づくりの為のデザインをどうつくるかを共に考えていく。
- 人づくり:マンツーマンで向かい合って行う。講師と学生との関係の重要性、デザインだけで考えないことも求められる。
- 現地・現場・現物を大切にする。
- Think Globally・Act locally:グローバルな視点は避けて通れない
- ビジュアルデザインにおけるサステナブルについてどう考えるか?:視覚デザイン、情報の消費など、映画、テレビ、印刷物至る全ての印刷物に当てはまる。
- 自分の幹を見つける方法:知識やスキルの積み重ねも重要ですが自分の幹を見つける必要がある。
- 問題解決能力の前に発見能力
- 家族も一緒に学べる教育環境
- 右脳と左脳のバランス
- 社会人に対する教育も必要
- ごっこ遊びが必要
- プロデュースとアルチザンを共存させるか、個別にするのか
- 新しさの再構築(全く新しいものはない)
- なんで?と問い続けていく
- ワークライフバランス
- 社会が本来の仕事からずれているので戻さなければならない
人と人の関係がなければ、教育の原点が失われてしまいます。その為にも原点回帰することが必要です。
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今後求められる人づくりについて
学術機関は、従前の人材育成に加えサステナビリティ(真に人と環境を視点にした価値創出)を規範にした新たなもの創りのレジーム・チェンジ(=体制転換)、パラダイムシフトに於ける新価値観や価値軸を研究、提示することが必須と考えられます。これらの研究開発機能を学術機関は新たなミッションとして保有していくこと、また人材育成機能に加え研究開発機能これら両面の保持が必要です。従って、これらのフレームワーク開発研究活動と人材育成活動を通じ人材育成に関してはグローバルに真に通用する下記のミッションに対し、特性に合わせた基盤教育とカスタマイズした特化育成が求められます。
- プロデュース機能の修得
- アルチザンとしてのスキル、ノウハウの練磨と修得
- 研究機能としての産官学連携のサステナブルデザイン研究機関
取り組みとしては新たに、
1.社会人教育としてインハウス人材の専門高度教育、人材育成の代替機能の保有
既存専門人材育成に関しては、
2.育成密度、レベルの飛躍的向上などを踏まえたサステナブルデザイン教育プログラムの創設
3.将来のもの、システムの在り様を研究し提示する研究機関設置
が求められます。
これら教育要素密度の高度化に対するプログラムの創出、研究機能の設置の具現化には、
- 大学(国内外)交流育成システム、6年間一貫教育(大学院一貫教育)
- IT活用をコアにしたグローバル高度専門能力育成プログラム、MDDA(master of design development administration)マスターオブデザインデベロップメントアドミニストレーション)等
が設定されるべきです。日本のデザイン教育のグローバルトップレベルへの飛躍には現下のレジームチェンジ変革期は絶好の改革のチャンスと考えられます。
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(C) Homma Hiroshi
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プロフィール
コーディネーター:植松 豊行(東北芸術工科大学教授デザイン哲学研究所サスティナブルデザイン研究センター長 )
プロフィール:1971年武蔵野美術大学造形学部産業デザイン科卒業。松下電器産業株式会社入社。2002年より同社パナソニックデザイン社社長を経て、2007年から松下電器産業株式会社上席審議役(デザイン担当)。武蔵野美術大学他にて、京都工芸繊維大学、多摩美術大学、名古屋工業大学にて客員教授、特任教授をつとめる。
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プレゼンテーション 「デザイン教育におけるサステナビリティ」
2003年東京造形大学に設立したサステナブルプロジェクト専攻領域の教育内容の紹介をとおして、デザインの新たなテーマとしてのサステナビリティについて論じる。また、サステナブルな社会の実現に向けて、デザインが果たしうる役割について考察する。文化、生活、社会 + 様々なデザイン領域 →「社会そのものをデザインする」
プレゼンター:益田文和(東京造形大学デザイン学科教授(インダストリアルデザイン/サステナブルプロジェクト))
プロフィール:1949年東京都出身、1973年東京造形大学デザイン学科卒業後、建設会社、デザインオフィスを経て、1978年以降フリ−のインダストリアルデザイナーとして家電をはじめとする様々な製品のデザイン開発や地域産業のデザイン振興など国内外のプロジェクトに関わる。1991年株式会社オープンハウス設立(代表取締役)、2006年LLPエコデザイン研究所開設(所長)、2000年より東京造形大学デザイン学科教授(インダストリアルデザイン/サステナブルプロジェクト)。国際的なエコデザイナーのネットワークであるo2 Global Networkのo2 Japan代表、日本デザインコンサルタント協会代表幹事、サステナブルデザイン国際会議実行委員長。www.openhouse.co.jp
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プレゼンテーション 「デザインは問題解決である ー 人と地球にやさしいサスティナブルな移動のために」
自動車をトランスポーテーションの一つに手段ととらえ過去100年の歴史を学びながら今後の時代背景を想定し問題解決の手法にのっとり、数学的に証明されている自然の中に存在する美しい形の持っている普遍性を学び印象的に捉えてきた美しさの論理的創造の構築チャレンジしている。
プレゼンター:木村 徹(インダストリアルデザイナー、名古屋工業大学 大学院 教授)
プロフィール:武蔵野美術大学卒業後、トヨタ自動車工業(株)入社。米CALTY DESIGN RESEARCH,INC.に出向し、帰国後、トヨタ自動車(株)外形デザイン室に所属する。ゴールデンマーカー賞、日本カーオブザイヤー受賞など受賞多数。同社デザイン部長などを経て、現在名古屋工業大学大学院教授。
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プレゼンテーション 「今日的デザイン教育/サステナビリティとデザインのあり方」
"概念を砕き 新しさを再考する"。専門学校桑沢デザイン研究所の教育理念とともに、教育内容を紹介し、健全なデザインのありかたのために取り組むべき今日的デザイン教育の視点と方向性を示す。時間と空間、記憶と認識 、未知と既知。「新しさ」という概念がそれらの狭間にあることを知って、モノ主導主義的デザイン教育からの脱却を図り、様々な関係性の考察からデザインとは何かを学び問う。
プレゼンター:本田圭吾(専門学校桑沢デザイン研究所 プロダクトデザイン分野 専任教員)
プロフィール:1974年生まれ。1996年東京造形大学卒業の後、アウトドア用品メーカーの商品企画開発部門を経て、専門学校桑沢デザイン研究所 プロダクトデザイン分野専任教員。HONDA KEIGO DESIGN 代表。日用品、レジャー用品等の企画、デザイン。中小企業とのパートナーシップを中心に、地域技術を生かした製品、商品の企画開発などを得意とする。サステナブルデザイン、エコロジーデザインの手法をプロダクトデザインに実践するための活動を続け、ワークショップ等での指導を行う。グッドデザイン賞受賞多数。製品デザインコンペ入賞多数。日本インダストリアルデザイナー協会正会員。
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