プレゼンターのプレゼンテーションとプレゼンテーションからの考察
このような現状から、ちょっと前の日本の暮らしに視点を置いてみて、デザインすることを考えてみてはと提案しました。石田秀輝先生(東北大学大学院環境科学研究科 教授)と白石正三郎先生(江戸川区役所 生活振興部長)にご参加いただき、お話をして頂きました。
石田先生のお話の中に、「文明は自然を淘汰して文化をおきざりにして進んできてしまった。元に戻ることはできないけれども、自然観が文明と文化の接着剤になるのではないか」というお話がありました。また、江戸時代の日本のテクノロジーは世界に先出たものがあり、このテクノロジーはいまでも通用するほどのハイテクノロジーだった時代もあって、大量生産ではなく通信販売や個人売りのような非常に自然と融合しながら、生活を楽しみながらテクノロジーを暮らしの中に取り入れていたのが江戸時代であるというご指摘もされました。例えば、茶室の中に宇宙観を見いだしたり、枯山水に海を創造したり、するこれは暮らしの中に想像力があり、自然観を取り入れているからこそ出来たことです。想像を膨らますこともデザイナーにとっては大切なのではないでしょうか。
江戸時代の「テクノロジーの素晴らしさ」「心と心を通わせあっていた自然観」「競争のない販売状況」それらが明治時代を向かえて、西洋型の競争社会が入ってきたことにより、職人が追いやられ現在に続いていると思います。
白井先生は江戸川区の生活振興部長でいらっしゃいます。江戸川区と伝統工芸と学生がコラボレーションしている『えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト』では、伝統とデザインの新しい融合がなされて沢山の商品が生まれています。特に学生にとっては実際にものになるという実践で学べるということはよいことだと思います。また、このプロジェクトで伝統工芸の可能性を見出したことで、人手不足の伝統工芸の世界に2人の後継者が戻ってきたという実績もあります。