そして、その結果として、今色々なことが起こっている訳ですけれども、これは、原生林破壊、森林火災の光景です。
先ほど触れた自然人という所をちょっと深堀します。地域は環太西洋に限って注目をしてみます。ヨーロッパと南北アメリカとの間にどのようなフィードバックがあったのか。もちろん、大航海時代に西欧から出かけて行った人達はアメリカに限りませんけれども、ここに、近現代の世界の「種」になる注目すべき交流があったと僕は考えており、ここに注目したいと思います。
「ダブルスパイラル」というフィードバックがあったと考えます。何を持ち帰ったかというと、思想的政治的認識、営みがあったということに注目します。
図の1を見て下さい。最初に、ヨーロッパから航海者、探検者、研究者が危険を冒して、海に乗り出していきます。大発見の時代です。南北アメリカを見ると、そこに到達して、そこの風物を見、そこから、色々とヨーロッパに持ち帰った物があります。図の2の部分をみてください。これが第1のフィードバックになります。何を持ち帰ったかというと、物質的な物はジャガイモやトウモロコシ、金、銀等の様々なものを持ちかえしました。
それに加えて注目して頂きたいのは思想的・政治的な認識、あるいは、営みがあったということに注目します。よくこの時代のキーワードにされるものに「ノーブ・サベージ」、「高貴な野蛮人」という訳語がありますが、ルソーの思想によくとりあげられる言葉です。私は、あまりいい言葉と思わないので、「気高い未開人」と訳していますが、そういった人びとを実際に目にした探検家たちは、当時のヨーロッパは、かなり閉塞状況にあり、旧教から新教へかわりつつある宗教、思想的な状況にありました。非常に窮屈な迫害、弾圧があり、伝統的王権からさらに絶対王権へと向かっていく非常に締め付けの強いヨーロッパからみた時、なんと自由で自然な生き方をしている人たちがいるのか、と驚きのまなざしを持ちながら自国に報告をしました。
ここには様々な媒体がありました。口で持ち帰って話す、航海記録で持ちかえる、また、面白いのは、イエズス会のような、布教活動をしてゆく宣教師達がいるのですが、その彼らが最前線で見た風物を本国に報告するニューズレターのようなものがあって、それがその当時のヨーロッパで非常にアバンギャルドな読み物としてもてはやされていました。ヨーロッパにはない、しかし、ヨーロッパのその先を指し示すような人間の生き方、というような捉え方で、当時のメディアが伝える。
それで、第三のフィードバックとして、啓蒙主義思想が生まれます。定説では、啓蒙主義というのはヨーロッパ独自の思想、ギリシャローマからきているといわれていますが、実はそうではない。半分ぐらいは、こういった南北アメリカを初めとする異文化との出会いから生まれた新しい概念です。
今は窮屈だけど、もっとなんか別の生き方があるのでは、という強い信念、オバマ氏ではないですが、「ウィー・キャン・チェンジ」というような、そういう気持ちを当時のヨーロッパ人達に抱かせた。そのことによって啓蒙主義というのが大きく花開いて行くという刺激剤になりました。
で、ヨーロッパで、こういうものを思想の食べ物にしながら育って行った啓蒙主義思想が、第三のループとして、南北アメリカにさらにもういちど再移入するわけです。移民という、実際の人の中に乗っかってゆくわけです。ヨーロッパで宗教、思想的に弾圧され居場所がない、という人びとが、新しい新転地をもとめて実験的な社会を作るという、大志を抱いていった。その彼らの基盤という物は啓蒙主義だったわけです。
北米では、一番端的な例では、アメリカ合衆国という実験が18世紀以降行われ、ヨーロッパにはまったくなかった、王権や貴族という特権制度を廃止、完全に自由平等な人々のつながり、民主的な意思決定をしていくということです。もちろん、その中に、先住民、黒人がはいっていなかったという落とし穴はあるわけですが、そういった実験をし、少しずつ弊害を修正しながら。
アメリカの独立は、英語ではレボリューションです。戦争でなくて革命なんです。フランス革命とは思想的双子のような出来事です。数年を置かずして、起こっていて、人脈もアメリカ独立革命をやった人たちがフランスにわたって、フランスからみにきて、ほぼ同時に起こったのがこれらの革命ですが、そういったものがヨーロッパに広がって行って、さらに19世紀、20世紀と民主主義というものが世界に広がっていく。
これも大きなグローバリゼーションであると思います。こういうようなことが環太西洋をはさんで、ダブルスパイラルがあったわけです。
これは、いろいろな人びとの自治の動きがあるわけですね。自分たちを、どうやって、より民主的で平等なものにしていくかという動きです。
これは補足ですが、今までの2つのグローバリゼーションと環大西洋のダブルスパイラルというものを経た現在いわれるグローバリゼーションの対抗軸、よくいわれるので、新しくはないのですが、西洋と東洋というものがもちろんあります。
これはさきほどのモンゴルというのが下地にあり、民主革命18世紀から様々な動き、ループを伴ったものとしてあり、また、北と南というのがあります。西欧とアジア、アフリカ中南米というもののひとつの対立。今まさに、対立ではない別な様相にはいりつつあって、非常に興味深く注目して行くべきです。
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