山本:パワーポイントがあるので、ご紹介いたします。これは今日発売の本で『温暖化地獄2』です。「チッピングポイントを超えつつある世界」というのがテーマにあります。
技術も政治もチッピングポイントを超えなければいけない。というのは自然がチッピングポイントを超え、温暖化の地獄の一丁目から二丁目に行きつつあるという状況で、我々の国際社会、社会の側、技術の側、政治の側、市民の側もチッピングポイントを超えて社会自らを変革していかないと自然のチッピングポイントを食い止められないと。
キーワードは温暖化の暴走、コントロール不能に陥るのではというところです。グリーンランドの氷上アマゾンの熱帯雨林とか北極海氷の劇的な減少ですとか。これが科学者の予想よりも早いと。
これは9月の北極海氷堆積の図ですが、2013年には0になると。あと5年で消滅するという可能性もあるという恐るべきデータです。30年前に750万?あったものが全然もとに戻る気配もないと。もうこれはチッピングポイントを超えたのではないかと。2008年はほとんど1年氷になっています。
体積でいうと昨年よりも減っているわけです。もう10年経ったら北極海氷床は夏は消え、温暖化は加速して、シベリア、アラスカのツンドラは溶け、メタンガスが地表にでてきてしまう。ツンドラがとけているという証拠に昨年のメタンガス濃度が増加に転じているわけです。そこで世界は非常に心配しているわけです。
北極海氷が夏の間だけでも消滅すると大きな影響があります。特にヨーロッパ、地中海、アメリカの南西部、アフリカ南部、オーストラリアの西部が大干ばつになります。アジアのモンスーンも大きな影響を受けると科学者は心配しています。
今、夏の北極海氷が消滅のチッピンングポイントを超えたのではないかと疑われている訳ですが、あと15年くらいでグリーンランド氷床の全面融解が始まると言われています。このまま放置すると2050年までにはアマゾン熱帯雨林の崩壊、温暖化地獄の五丁目までゆくのではないかというのが世界の科学者の見方です。
どうやって問題を解決するかですが3℃に抑えるのか2℃以下にするのかそれとも現在より温度を下げて0.5℃以下に抑えるのか今3つの選択肢が議論されている訳でして、まぁまず2℃でいこうという声が挙がっています。
しかし、2050年までに50%削減したとして、これはITCCのマーチン・タリーが見せた図ですがここまで温度は上がってしまうと。ということは、2050年までに半分にしたとしても相当な犠牲がでることを覚悟せざる負えないと。したがって予防策のみならず、適応策もとっていかねばならない、ということであります。
このシナリオをどう実現するかと言うとIAEA(国際原子力機関)は昨年、炭酸ガスの貯留装置をあと20年間で460基建設すると言いました。原子力発電所は全世界で235基建設すると。それか省エネは今、平均年0.9%ずつエネルギー効率の改善をしていますが、それを2倍以上高めて毎年2パーセントの省エネをやると。トータルで、40%の省エネをやるということです。
今、危惧しているのは先月、クライメット・ウォーズ(気候戦争)という本をカナダのウイニー・ダイアー(Gwynne Dyer)が出版し、私もやっと手に入れて読んだのですが、彼は軍事の専門家で、ロンドン大学の軍事学でドクターを持ち、アメリカ、カナダ、イギリスの海軍に勤め、現在軍の大学で教鞭をとっています。また、ジャーナリストでもあり、大変著名な外交専門家でもあると。
それで、彼は、2050年までに世界でゼロエミッションにすると。2030年までに80%削減するまでにいかねばならないと。
このようなことを言っているのはアメリカのレスター・ブラウン、多分ジェームス・ハンセンもそうだと思いますが、とにかくものすごく削減をしない限り大変な状況になるといっています。
この気候戦争で取り上げられている事例が色々あるのですが、私が驚いたのはインド、パキスタンの水戦争による核戦争の勃発が非常に憂慮されると。原子力というのが、大変信頼できる技術ではあるが、世界に拡散するのは真剣に考えなければならないとしています。
イギリスの情報部の非常に有名な20世紀の前半を生きた方が回顧録を残したのですが毎年世界中から戦争が起こるという情報がはいってくると。その度にその可能性は低いと彼は言い続けたが二回間違えたことがあると。それが第一次世界大戦と第二次世界大戦だったと。これはジョークなのかもしれませんがね。
必ず干ばつ、水不足、食料危機、難民の発生、越境移動に関わる国際紛争が必ず起こるとウイニー・ダイアーは考えています。彼が言うには、飢餓が発生し、食料危機になった時、子供が飢え死にするのを最後まで見守っている親はいない、必ず豊かな社会へと求めて移動したり、襲撃したりしてきたのが人類の歴史であると。私もまさにそうだと思います。
プリンストン大学のある教授が「コンスタントバトル」という本を書いているのですが、その中でも人類の歴史は常に戦いの歴史でもあったと言っています。
そのことを考え合わせますと、人口の爆発的な増大と温暖化よるかんばつ、食糧危機という時代を向かえているわけです。いかに国際的に協力して、この問題を解決していくかということを考えなければいけません。
安倍元総理は全世界で半減ということを提唱され、今年福田ビジョンが発表されて日本は6〜8割削減とここまできた訳です。11月にニューズウィーク誌は「グリーン・レスキュー」ということをいい出しています。金融崩壊後の世界経済の後退を環境エネルギーで克服しようということです。
このこと自体は、私は正しい方向だと思っており、いかに我々がエコイノベーションで、地球温暖化に立ち向かうかということです。これは安全保障の問題であり、生存戦略であると思います。これをどうやってやるかです。
しかし『温暖化地獄』と、昨年に引き続き本を出しますと、私を終末論者のように言う人がいて非常に困るのですが、そうではなく、いかに我々は現実を見据えて行動していかなければならないか、ということであります。以上です。
益田:ありがとうございます。