(C) Rei Kubo

考えるか、泳ぐか? 記憶のデザイ

Chapter

1 アメリカ社会の変化
2 共同体の感覚
3 ルーラルスタジオ、日本の茶碗にみられる、クリエイティブな解決策
4 国際デザイン・リソース・アウォードとその背景
5 「記憶のデザイン」における、4つのアプローチ
5-1 一つ目の方法 「使い手の記憶を使ってデザインする
5-2 二つ目の方法 「材料の記憶とともにデザインする」
5-3 三つ目の方法 「記憶のデザイン」
5-4 四目の方法 「自然の記憶」Photo Album

講演1

「考えるか、泳ぐか ?  記憶のデザイン」

 講師:トム・ジョンソン/建築家、国際デザイン・リソース・アウォード主宰

司会:引き続きまして、今回アメリカからトム・ジョンソンさんにシアトルからお出でいただきました。建築家で、我々が非常に我々大きな影響を受けている「国際デザイン・リソース・アウォード」というコンペティションを実施され、世界中のデザイナー達が色々なアイデアを出して推進してきた方です。今回は、いくつかの作品を会場にも展示してありますので、ご覧ください。第一回本会議の際に、どうしてもおいでいただく事ができなかったのですが、待ちに待ったジョンソンさんのお話しを伺います。

1 アメリカ社会の変化

トム・ジョンソンです。サステナブルデデザインを話しあう機会を作ってくださった方に感謝申し上げます。
今日お話しする内容が実際に皆さんに役立つもの、実践に役立つものであれば良いと思います。また、将来、結果に結びつき、つながれば良いと思います。私の今日お話しする事が、将来の我々の行動に繋がって欲しいと思います。社会に変化をもたらし、持続可能な社会を実現することを目指して行きたいと思います。

より良い将来を作るための変化は可能だと思います。例えばアメリカに目をむけると、私がまだ10代だった1960年代、1970年代、水や空気の汚染に対して不安がどんどん募ってくる時代でした。

そのころ、パウロ・ソレリという建築家が、それに対してある解決策を考えました。アリゾナ州、南西部にアーコサンティという生態学に基づいた建築物を作り、完全環境計画都市=アーコロジー(参考資料:Wikipedia)を実施いたしました。大きな構造物の中で食物、空気、水を完結し、なるく必要のない土地は自然そのものに還すという考え方であります。私も光栄にも1972年のこの立ち上げに参加する事ができました。

非常に急速な変化、貨幣経済、現在のような様相に急変していった時代です。従って我々は現在のような状況にくるまでに新しい方向性、確かにこのようなことでしめされてきたわけですけれども、今の混乱の中、環境に対する脅威の中で、経済的なモデルのひとつとして過去にもたらされたこのようなモデルが実際に経済的な成長や反映に役に立たないんではないかという考え方が強くなっていきているのであります。こういった新しい考え方を実践する機会が過去にあったということをご報告します。

アメリカにおいては社会、経済というものが大きな変化を感じております。オバマ氏の大統領選での勝利をもたらすような、大きな変化が起こってきました。変化というのは、当然必要であり、起こりつつあるわけですが、我々はこれをどのように、健やかで持続可能な将来に結びつけていくか、導いて行くことができるのか。

最初に考えたいのは、最初の会議で出された、サステナブルデザイン宣言というものについて、指摘をしておきたいと思います。我々として問うべき生来の特色として、持続可能な社会の特色とはどんなものかを考えなければなりません。関係性ということを非常に価値の高いものとして考えねばなりません。人と人、人と自然、人と社会の関係性です。それがデザインへのアプローチの問いの最初だと思います。

出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント

2 共同体の感覚

来の伝統的建物には学ぶものがあります。これは北大西洋にあるフェロー諸島にある建築物です。ここでは自然との関係の中で人々は共同体として生きてきました。これよりも新しい最近の例としては、少なくとも西洋に於いては、自然を理想化した建物が作られるようになりました。これは18世紀に、イギリスのコリン・キャンベル(Colen Campbell)がつくった一例ですが、ストウヘッド(Stourhead)と呼ばれているものです。これはヨーロッパの芸術運動、ロマン主義運動の建築における代表例として紹介されます。健康と健やかさと美と観念の象徴としてこういうものが作られたわけです。
あらゆる人々が持っている個人と人権という思想があるわけです。世界の各所において人が人として自由に存在する、誰とでも好きな商売を始めてよいという自由経済、何をどう所有してもよいという近代の個人主義の素がこのようなものの根底に見られます。しかし逆に言えば、このような中には個人ではないものに対して、自然やその他に対しての軽視、無視というものがあることを忘れてはならないと思います。苦労して手に入れた権利である個人の人権というものですが、その裏面にはそういうものがあるということであります。

人間の持っている一つの特徴にコミュニケーションといものがあります。互いに連携するということですが、持続可能な将来を考える時、そのような能力を使い、学び、成長することです。我々は周りから模倣することで学んでいきます。周りには自然がありますから、自然から学ぶことによってものを作っていくことができるという習性であります。

世の中で、サステナブルデザインの運動がますます強くなっています。これはけして不思議なことではなく、当然の帰結であると思います。自然環境へ向ける目がますます重要になってきており、自然と調和、統一、関係性の中で生きていくということです。

これはロンドンにおける都市農業についてのプロジェクトです。都市における農業の例は世界各地でみられますが、既に都市として建設された環境に、農業の思想をもう一度取り戻していこうという動きです。近年様々な農業の思想を取り込んだ建築が自然との調和した形で建てられています。

私が住んでいるシアトルのバラード地区ですが、これは図書館です。植物を使った屋根、屋上があります。先ほどお見せしたフェロー諸島の伝統的な建造物と共通するところが見られます。こちらは、C.K.チョイビルディングというもので、ブリティッシュコロンビア州立大学のアジア研究センターです。やはりこれもデザインとして自然をとりいれており、さらに、その近隣で既に使われなくなった建物を取り壊した木材、レンガなどを再利用し作られたという大変に新しい試みが様々とりこまれております。トイレにおいてもコンポストを取り入れています。

これによって持続可能な社会に結びつけて行くとともに、楽しい生活ができるようにしていこうということです。こういう人々にはやはりコミュニケーションを求める人の特有の衝動があることがわかります。個人、そして文化を考える時、知識を共有し、世界平和を実現するという、私達が持っている共通の強い衝動というものの重要性を感じます。それを可能にするには共同体という一つの強い感覚がなければなりません。共同体という強い感覚が必要なのです。

3 ルーラルスタジオ、日本の茶碗にみられる、
クリエイティブな解決策

れもアメリカの一例ですが、「ルーラルスタジオ」と呼ばれるものです。田舎のスタジオ、ということで、ジョージア州大学の建築学の教鞭をとっていたサミュエル・マクベイという建築家が始めたプロジェクトです。学生たちに、建築を机上の空論として教えるのではなく、人々から人々のニーズ学べ、ということで学生たちがフィールドワークをする。この周辺地域というのはアメリカでも最貧地域であったわけですが、学生たちが考えもしなかった、生活におけるコミュニティが必要としている事をどんどん発見し、それに対してどのような解決を用いるかということを検討しました。実際の建築物の建設も含めいろいろな活動が始まりました。これは教会の試みの一つの写真です。当然、在所の、地元の材料を使うことを基本にしており、再利用の素材も積極的に行っていこうということで、こちらは車の窓ガラスを利用して作った者です。
変化を起こすことを目指す、我々が新鮮で新しくあるためにはどうしたらいいか。常に新鮮なものを生み出すためには、新しい思想に基づいてやろうということです。新しい思想が必要です。

アートというのは新しい思想の源泉ということがいえると思います。当然のことです。アート、アーティストは我々に何かを与えてくれる、ということを忘れてはなりません。同じく、様々な社会的問題を解決しようという時、我々はクリエイティビティ、創造性をもって解決策を提出していく必要があるわけです。

これは日本のお茶の碗です。随分前のことになりますが、これを初めてみせていただいた時、非常に感動しました。壊れているにもかかわらず、修復され、新たなる価値が生まれていることに気がついたのです。材料に対する記憶やその使い方が価値に対して極めて大きな影響をもたらすのであります。この現代社会において、価値にまったく違う見方をし、またリサイクルし、また材料を再び使う事でデザインすることができるという一例だと思います。

4 国際デザイン・リソース・アウォードとその背景

先程のご紹介の中で、デザインプロジェクトを紹介いただいたと思います。国際デザイン・リソース・アウォードですが、これについてご紹介させて頂きたいと思います。ワシントン州においては漁業と森林業が長年、経済の主産業でした。90年代諸初頭、法律が制定され漁業や森林伐採に制限が行われるようになりました。というのも、海も山も、その能力以上に魚を捕獲し、木を伐採していたからです。地域社会にも痛手で、厳しい時期でした。
そして同じ頃、ワシントン州シアトル市に、包括的なリサイクルセンターが設けられました。不要になったものを道に置くと市の当局が回収するということが実施されました。しかし不要品は集まりましたが市場がなかったため、どんどん貯まる一方でした。

州は、どうやったらそれを生まれ変わらせる事ができるかと考え、妻のバーバラが州に対して、提案をしました。地域としては、失業の問題があり、そしてまた、山盛りの物があり、どうしていいかわからない。であれば、デザイナーに一枚かんでもらい、この問題を解決することに手をかしてもらったらどうかという提案をしました。私どもの提案したのは、デザイン・リソース・アウォードというコンペティションであります。そしてデザイナーの方たちに集めたものを見てもらい、どう使うことによって新たな製品に仕上げることができるか考えてもらいました。かつ、それは商業ベースに乗せるということも考えてもらうわけです。これがビジネスとなって、失業者の雇用になるということを併せて考えてもらったわけです。先ず、最初のプログラムとしてワシントン州だけで、このコンペティションを始めましたが、初年度においても、実際は参加の半分は国外の人たちでした。これはインターネットのおかげです。そして、こういった問題というのはどこの国でも感心時だということが分かりました。こういった経緯があり、今私が皆様の前でお話ししています。このプログラムを実施するにあたって、いろんなアイデア、アプローチが紹介されることは本当にうれしいことでした。

プログラムの資金源は最初の2年間は州が資金を提供したわけですが、州としてはもはやコンペをささえる資金がないということでそのあとは英国、日本の経産省、また、その他の企業団体のご支援を仰いで続けております。

初めて日本に来た時、1999年だったでしょうか。その時、益田さん、黒崎輝男さんにお合いしました。その時、「サステナブルデザイン」ということをお話ししましたが、英語としてはあるが日本語には翻訳し難いということでした。このサステナブルデザインについて説明した際、使った言葉が「Design with memory?記憶のデザイン」です。また、様々なエントリー作品をみておりました時に、この「記憶のデザイン」という言葉はある意味で、エントリー作品にとって後押しになりました。なぜ審査員がこれはいい、と選んでいるかが分かってきたからです。そしてここ数年間にわたって、どうしたら「記憶のデザイン」を十分に説明できるか試みてきました。

出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント

5 「記憶のデザイン」における、4つのアプローチ

コンペティションの作品についてご紹介したいと思います。皆さんにとっても商業ベースのデザインとして、役立てて頂ければと思います。そうすることによって、関係に基づいた社会をより持続可能にしていくことができると思います。
デザインコンペは6回開催されました。そこでの目標は持続可能な製品、建築物のデザイン、設計にありました。そして様々なソリューション、前向きな解決策が、良い変化をもたらすことを目指しています。この賞の審査基準は、一つ目として、使用済みのリサイクルされた素材や、持続可能な素材を用いているかということでした。二つ目としてこれら新素材の価値を高め、利用を増進する商業ベースの生産に乗るか、ということでした。しかしこれらの問い以外にも、審査員としてはこのプロジェクトは使用後に再利用ができる素材であるか、またあるいは、再利用のために容易に分解ができるか、コンポストができるか、また、その製品を作るに当たりどのくらいエネルギーを使って作っているか、毒性物質を使っているか、もしそうだとしたら有毒物質はどのようにして取り扱われたかを知りたいとのことでした。いずれのデザインも、材料とメーカーと自然と環境との関係性が強いものを見ており、お互いにメリットをもたらす関係性をみたのであります。

こう言った関係性にすることによって、製品の価値が高まり、プロジェクトそのものが商業ベースに成功するという事になったわけです。何回かコンペティションをし、審査員が賞を与えるにあたって、4つのアプローチが繰り返し出てくることがわかりました。それが記憶のデザインということです。

この4つのアプローチが、デザイン、製品、建物であれ、関係性に基づいたものを作るにあたって、役立つことを願っております。そしてこれが、ただ単に、現在だけではなく私どもが将来にわたって築こうとしている持続可能な社会において主流になることを願っております。

5-1 一つ目の方法
 「使い手の記憶を使ってデザインする」

記憶のデザインとして4つ、ご紹介したいと思います。
一つ目の方法としては、「使い手の記憶を使ってデザインする」ということであります。

これは、非常に面白いプロジェクトだと思います。確か、1994年、だいぶ前です。インドネシアのシンギー・カルトノ氏のグループの作品です。会場にも展示がありますが、シンギーさんは、今もなお、このプロジェクトを手がけており、成功されております。使い手の記憶でデザインしている、ということですが、この製品のどこがユニークであるかというと、メモリなどの情報が記載されていない、ということにお気付きかとおもいます。自分の感覚を使って探求することをとおして、製品とユーザーの間に、愛着が生まれるということであります。一回買ったら捨ててしまうのではなく、ずっと自分のものとして大切にするという事であり、消費を減らす経済を構築するということを視野にいれています。

それだけでなく、シンギーさんは、田舎に住んでおられるのですが、村の人口が流出し、死に耐えてしまうのを防ぐために、自分の村そのものを持続可能にしていきたいと思ったわけです。このオリジナルなラジオを作ることによって、その地域社会のターミナルで使用していた運送パレットの木材を用い、村で得られる原料を使って、このラジオを作ったところがポイントです。これは、ある製品をとおして関係性を築き上げる例だと思います。

これももう一つ、ご紹介したい面白いものですけれども、これも使い手の記憶のデザインです。グリーンピース・アクティビスト・バッグという鞄です。1999年頃の受賞作品です。グリーンピースというのは、様々なことをやっている組織ですが、この作品の背後に潜むアイデアですが、天然ゴムの液からできたトップカバーを用いている点です。アマゾンで育ったゴムの木ですが、この樹液を収穫しているタッパーという職業の人たちがおり、そのタッパーの人たちの仕事を支え、地域社会の人たちも生活の糧としています。村民にとって、現金収入になるということであります。ゴムの木は樹液だけをしようするので、森林を伐採しなくてすむ。また、現金収入があるならば、エネルギーのためにも森林伐採しなくても生活できるという話です。購入した人は、自分とは別のところの関係性を有することになり、購入した人が支援するということにもなるわけです。

もう一つ、ユーザー使い手の記憶のデザインということでありますが、関係性に立ち入るという事例です。この製品ですが、特許も取得し、どこかのベンチャーキャピタルが事業にしておりますが、それほど大幅に注視されたわけではないのですが、この作品での構想は、全て生物分解できるプラスチックを用いるという事で、この上の部分は開ける事ができ、種を入れて着用しておりますと、体温により種が発芽してその中で種が育ち、育ったら、庭に植えればいいということであります。使用者の体温を使う温室のようなものです。これまた使用者が自然との関連性を着用によって育てるというものです。

(C) Rei Kubo

1994年国際デザインリソース・アウォードを受賞した木のラジオは、現在、文房具とラジオのブランド「magno」として、世界で人気である。

出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント

5-2 二つ目の方法
 「材料の記憶とともにデザインする」

次の、二つ目の方法ですが、「材料の記憶とともにデザインする」ということです。こういったアプローチというのはあくまでも価値を高めるということであり、何かを作るに当たって、人にとって重要な意味をもたらすということをデザインし、それを一つの商品として成功させるようともっていくわけです。
どんな材料かわかりますか?工業製品のバンドです。鉄道やトラックなどの運送の現場にこのような、スクラップがあるわけですが、そこからこういったバスケットを作ったということです。デザイナーは、アルナス・オスラパス氏、彼はインダストリアルデザイナーで、ウエスト・ワシントン大学で教鞭をとっておられる方です。

アートフェアなどが開催される時に、こういったものを販売しているのですが、もとの材料は、鉄道のあるところで拾ってくるので、ただなわけですが、300ドルで売れる、ということで、いいビジネスになっているわけです。皆さんの身の回りにもきちんと注意と関心をもって、作りなおしたならばかなりの価値を高めることができるものがあるでしょう。

これは、生産もそんな速いペースではありませんし、ある種の工芸品だといっても差し支えないかと思います。

色々なところで作ってもらったこともあるのですが、そこで出てきた問題というのは、材料というのは場所によって違うということです。季節によっても素材が違うということもあるわけです。こういった素材を使うというのはチャレンジであるといえるでしょう。

これは、高速道路などにおける”道を譲れ”という道路標識ですが、これを用いて、椅子やありとあらゆる家具を作っています。折り紙みたいに折り曲げて作っているのですが、道路標識を使っているわけです。使われなくなった道路標識という廃材としてあって、そもそも、質が高い素材を使っているし、塗装も良いので、折ったとしても、剥がれることなく作る事ができます。これも非常にシンプルな商品で、素材を有効利用できている例です。

これは、ABSOLUTという文字が見えますが、これも、面白さの一つは、ボトルを返してもらって、もともとのボトルと同等あるいはそれよりも高い価値のものになっている、ということです。グラスですが、脚はアルミです。スクリュートップで瓶の上の部分をねじ入れられています。材料がどこからきたかわかるでしょう。もともとの製品との関連性がわかると思います。それが予期されていたことです。

5-3 三つ目の方法 「記憶のデザイン」

三つ目の方法ですが、「商品の記憶」のデザインとよばれるものであります。先ほどとはちょっとアプローチが異なります。IDRAの審査員にフィリップ・ホワイトという方いて、確か第一回目の講演者です。フィリップス社はもともと、ソニーとCDを共同開発し、特許を共有していると思います。(参考資料:wikipedia)
CDというのは、非常に純度の高いポリカーボネート樹脂を使用しております。使用済みのCDを売買するマーケットがあり、ポリカーボネートといったものを再利用しています。どちらかというと、これはプロトタイプのプロジェクトなのですが、使わなくなったCDのポリカーボネートをCDプレイヤーに使うということです。一つの業界、製品においてきちんと完全にループにして、素材を使うことができるということであります。

経済に関して昨今、様々な問題が話題になっております。しかしこのような技法があったならば 非常に大きなインパクトをもたらすことができると思います。

アメリカにおいては、確かコロラド州だと思いますが、州が3000ドルを支払い、15年以上使用した車を買い取りリサイクルしました。3000ドルをつかって、市民がエネルギー効率の良い車に買いかえることを期待したのです。燃費のいい車にかわることでエネルギー効率が良いという考え方です。これも一つのアプローチではありますが、しかし、アメリカのシステムとしては、需要以上に車はどんどん生産できるし、されている。だからループとして、集結する必要があるわけです。CDをCDプレイヤーにするように、車をリサイクルしまた車にすると。

今や自動車会社が倒産、生産停止という話もでてきておりますが、自動車業界の人にとっては決して良いニュースではありません。

ここでもう一つ例をご紹介します。ガラスからガラスのリサイクルです。ガラスをリサイクルするのはなかなか難しいのです。異なったガラスの種類はうまく繋がらなく、冷え固まった時に割れてしまうとのことです。ガラスと一言でいっても、同じものを集めて一つの製品を作るようにしなければなりません。

ワシントン、シアトルのベッドロックという会社ですが、これが最初に商業ベースで成功した商品群です。これも展示されていますね。こういった蛍光灯ですが、20年代、30年代の建物には昔ながらの拡散板が蛍光灯を覆っていました。こういったガラスのものを集めてガラスを2枚を重ねて熱しとかすと、中に泡が入りパターンがでてきます。ガラスからガラスへのリサイクル例です。

これも面白いリサイクルの例です。商業ベースにのっているか、あるいはプロトタイプなのか、焼物を作る際に、ロスになるものも多くあるわけです。そのような、商品にならないようなものをどう利用できるか、もういちど商品にできないかということを考え、工場でのムダを削減したいと思ったことです。

これは前回2003年の時の作品ですけれども、とても美しい作品だと思います。有田エコだという会社名だったと思います。こう言った伝統的なチェーンのようなパターンがあるのだと聞きました。焼物の粘土がどんどん取れなくなっているので、使ったものをリサイクルすることによって、新しい製品にしようということになったのです。伝統的に日本にあったパターンを活用した例だということです。

これはもう一つ、ランプをランプに転用したプロジェクトです。卓上ランプですが、もとは、自動車のテールランプを使ったものです。アクリル系プラスチックであります。

出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント
出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント

5-4 四目の方法 「自然の記憶」

四つ目の例に行きましょう。これも自然の記憶をもとにしたデザイン作品です。
今見て頂いているものというのは、確か初年度の受賞作品ですが、ワシントン大学の学生さん2人が出した作品です。何をしたかといいますと、アメリカにはジュースバーというものがあるんですが、シアトルのジュースバーのジュースのパルプ(繊維)、搾りかすを集めたわけです。こちらはセロリの繊維とコーンスターチ、白身、人参からできた訳です。キーボードを作るにあたって、生物分解できる天然素材で作ったということです。回路の部分はフィルムですが、技術が変わって非常に簡単にばらばらにして残りの入れ物はコンポストとして土に帰しても有毒ではないということです。なぜできないのか、理由はないと思います。

色んな商品、特にエレクトロニクス製品で絶えず進化が早い製品があると思いますが、例えば、パッケージのようなキーボードがあると思います。どんどん捨てている訳ですが、コンポスト化ができるのであればリサイクルできるということであります。

商業ベースにのった商品ですが、このようなことを試みているものであります。「ジム・ネイチャー・テレビ」というものですが、サバ・エレクトロニクス社のために、有名なデザイナーである、フィリップ・スタルク氏がデザインしたものです。テレビの外装が先ほどと同じようにコンポストできる素材です。なんでもかんでもプラスチックを使う事から脱却しようというプロジェクトです。画面の回りを金属枠がかこっていますが、スクリーンが爆発した時への配慮ということです。安全性の問題からいろいろなことを考えねばなりません。

これは「ツイストランプ」というものです。全部生物分解できるプラスチックを使っておりますので、ランプを作るけれども、スタンドを作るけれども、紙と一緒に最終的にコンポスト化しれば無駄になるものが出ないと。

そして、私のお気に入りのプロジェクトです。まだ実現されていないかもしれません。「シカモア・ファン」と呼ばれるものであります。シカモア(カエデ系の広葉樹)は種がおちる時にくるくる回転するのをご存知でしょうか?ですので、オーストラリアのデザイナー達がこうしたシカモアの種をモデルに、扇風機(サーキュレイター)を作ったわけです。樹脂を使った訳ですが、回転成型という成形方法を用いますと、樹脂の無駄がない。技術も難しいものではなく、簡単に作ることできます。また、リサイクルできる素材を使っています。ポロプロピレンです。これも、使い手の記憶のデザインということであり、シカモアの種を見て発想が生まれたからであります。

今まで、記憶のデザインということでいくつか事例をご紹介いたしましたけれども皆様がたが持続可能な商品を開発するにあたって、また、持続可能な将来の経済を構築するに当たって、役に立つことを願っております。

私どもにとって、そもそも、材料がどこから来て、どこへゆくのか。また、現在どういう風に使うのか、また、使った後どうなるかを考えなければなりません。いずれのアプローチも価値を高めるということであり、それこそが持続可能なデザインかつ、商業ベースに乗せる事ができるデザインであります。

もうひとつ例を申し上げます。1992年のものですが、これの方が現実的かもしれません。読めるでしょうか皆さん。古いものですが、再び新しく生まれ変わるという事であります。1600年代、ヨーロッパの人たちは、ヒョウタンを木の型の中で育てて乾燥させ、容器として使用していました。このアーティストは新しい考えでさらに発展させたわけですが、農業を通して製品を「育てる」ということです。しかしこの型のところですが、ここにイチジクを植えて、ハイドロポニク(植物用の栄養素)で育てた訳です。脚のところです。イチジクというのは、非常に根が密になるので、型が根でいっぱいになり、それを型から外してひっくりかえすと、テーブルの脚になるわけです。毎年新しい家具が生まれる、という考え方です。ありとあらゆる家具をこういうふうに育てることができるのではないでしょうか。

アイディアが有益であったと、あとで思って頂ける日があれば光栄です。ご清聴ありがとうございました。

出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント
出典:トム・ジョンソン氏講演パワーポイント

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