(C) Rei Kubo

「前向きなデザイナー 世界を変えるための手法を」

Chapter

1 持続可能なデザインの旅
2 「材料と生産」
3 「持続可能なミッションステイトメント」
4 「問題解決」
5 「持続可能なコンサルティング」
6 「「新しいマーケットを生み出す」

講演2

「前向きなデザイナー 世界を変えるための手法を」

 講師:アアリス・シェリン/セント・ジョンズ大学グラフィックデザイン助教授、作家、デザイナー

司会:アアリス・シェリンさんですけれどもシカゴ芸術大学、ロチェスター大学で学ばれまして現在はセント・ジョンズ大学のグラフィックデザインの助教授でいらっしゃいます。サステナビリティとグラフィックデザインというその二つの領域に関して様々な研究をされております。最近、この8月だと思いますが「SustainAble(サステナブル)」という新しい本を出されました。おそらく今日はその本についてもご紹介いただけるといます。それでは「前向きなデザイナー世界を変えるための手法」ということでシェリンさんをお迎えしたいと思います。

アアリス:ご紹介ありがとうございました。今日は持続可能な開発のデザインについてデザインのプロフェッショナルとしてどうするかということについてお話したいと思います。私はこの二年間、もう二年以上にかもしれませんが持続可能なデザイン、サステナブルデザインにおける研究についてお話してきました。

私はもともとグラフィックデザイナーですが、ただ単にデザインの研究について書くだけではありません。私自身は調査する人と考えており、まだ公表されてない、デザインにおける問題というのが沢山あると思うのですが、それをもっと知りたいと思い、二年間以上この問題に取り組んできました。オフィスではなく、全世界の人たちと話しをしてきました。それを通じて、いくつかの考えにつき当たりました。持続可能な形で仕事をするとはどういうことなのか、について学びました。今日はそのことをお話したいと思います。

1 持続可能なデザインの旅

千里の道も一歩からとよく言われていますが、しかし今回のような場合の旅、持続可能なデザイン、というのは色々な形で色々な方向から始まる、色々なやり方があると思います。そしてサステナブルデザインというこの旅は色々な人が、色々な歩みをしなければならないということではないでしょうか。

では持続可能な形で働くということで私いくつかの例を出しながらお話したいと思います。グラフィックデザインの事例もありますし、プロダクトデザインの製品事例もあります。いくつかに分けて話したいと思います。。

先ず、「材料と生産」、これがもっとも明示的なものだと思います。「倫理についての規律」、倫理規範といったらいいでしょうか。実際に人々のビジネスにどう反映されるかということは大変興味深いことだと思います。「ビジョンのターゲット」、これはターゲットのアイデア、コンセプトであり、例えば私たちは持続可能性について考える時、物質的なことを考えることが多いのですがプロセスも関わってくるわけです。このビジョンとかコンセプトというのが持続可能性に大変重要であると考えております。「問題解決」、と書いてありますが、私たちデザイナーはとてもそれに長けていると思います。けれども、ここで強調しなければならないのがデザインの強みが持続可能な問題解決にあると思います。また「共同」ですね。色々なデザインの分野においての共働・協力、一緒に仕事をし、持続可能な解決を出すことが必要である、というふうに思います。

「持続可能なコンサルティング」と書いてありますけれどもグラフィックデザイナーもインダストリアルデザイナーも建築家も全部関与してくることになると思います。そして「マーケットを生み出す」ということですね。デザイナーは、ただ単に業界のニーズ、人々のニーズに対応するだけではないということです。自ら出て行ってサービスを生み出していくことも必要と私は思っております。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

2 「材料と生産」

例えば、「あまり時間はかけない」ようにします。忘れていけないのはすぐ手の届くところに解決策があるということです。「木の下の方に成っている果物は手が届きやすい」ということですね。

グラフィックデザイナーが仕事の際に関わる、紙の生産についてのイラストです。生産、そして生産後のことです。グラフィックデザイナーは材料や生産に関することにあまり関わりません。それはインダストリアルデザイナーの領域だと考えておりますが、グラフィックデザイナーとしても、特に持続可能性を考える場合、例えばリサイクルペーペーパーを使うときなど、その材料や生産プロセスも重要であるということです。グラフィックデザイナーにデザインのやり方にも関わってくるのだということを申し上げておきたいと思います。

例をお話したいと思います。バージニア州リッチモンドにある、アナザーリミテッドリベリオン(Another Limited Rebellion)というデザイン会社ですけれども、彼らがやっているのは柔軟(フレキシブル)に、ということです。なるべく二つを一つにし、印刷部数を少なくしようということであります。ポスターとフライヤーを1つにしているわけです。例えばポスターが片面で、もう一報の面は、読むフライヤーにするなど。この会社は再生紙や持続可能性をもって生産された材料、エコ製品を使っているのですが、その他にも、色も、前の仕事で残ったインクを使って印刷するということをやっています。印刷物を作る際の一連の工程の中で、最も汚染があるのは、印刷する工程であると仕事であるということですが、材料のことはできるだけ配慮し、さらに柔軟になると、より効果を出すことが出来ると思います。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

3 「持続可能なミッションステイトメント」

持続可能なミッションステイトメント(組織における社会的使命や方針を文書で表したもの、信条)というのは倫理考慮に関係してきます。これはアイデアとかコンセプトに関わってくるものですが、徐々にデザイン会社は自分たちのミッションステイトメントを出しています。そういうところが増えてきています。

皆さんご存知の国連の、国連出版ということを例にあげたいと思います。国連で行われていることは、討議であります。そしてまた報告書を書くことが大きな仕事です。6つの公用言語がありますので会議が行われると、6つの言語で報告書を出さなければならないわけです。6種類出されるということで、相当多くの出版物を扱うことになります。

潘基文(パン・ギムン)事務総長は全ての国連施設に、もっと環境を意識して働くようにという指令を出しました。私は国連出版局と話をし、ここで一緒になって倫理考慮、技術ガイドラインを作りました。言わばアウトリーチ(広報など、自らの存在を周知させるための活動)を行う計画を出しました。これはなぜかというと、二つ理由があります。先ず、第一に、私デザイナーであり、私は彼らの問題を解決するという仕事を担っている。問題解決ということにデザイナーというのは長けています。ビジュアルな問題解決であろうと、製品を作り出すという問題解決であろうと、私たちは大変長けているということであります。また多くの企業が倫理行動を作り、持続可能なミッションステイトメントを作るとなると、国連出版でもそうですけれども、同じようなこころを持つ組織と協力をするということになります。というのは、倫理考慮を持つデザイン会社がそれに一緒に協力をすることができる、ということです。倫理考慮ですけれども、これはとても長期的で大きく、必ずしも具体性のあるものではないかもしれません。今日はいいかもしれないが5年後はどうか、将来どの方向がいいか、ということを出します。

また技術的ガイドラインについては、皆さんよくご存知だと思いますけれども、最も良い材料を使うことです。できれば再生素材。インクにおいてもそうであると。その生産の方法についても、ガイドラインがあるわけですけれども、例えば出版会社である場合には、国連でも世界に4つの印刷局を持っています。でもすべての人が印刷技術に関わっているわけではない。しかしミッションステイトメントと倫理考慮をもっていれば生産の前に働く人も後に働く人もやはり一緒に持続可能な考え方に関与することが出来るわけです。

もう一つ必要なことは「アウトリーチ」です。自分たちが何をやっているかを、周囲に知らせることが重要です。自分たちがやっていることを知らせなければ付加価値をつけることができません。自分たちのストーリーを共有するということが必要なのです。多くの場合、このアウトリーチというのは持続可能な形で人々がどう働くかということに関わってまいります。それがどういう形で影響を及ぼすでしょうか。

これはニューヨークのTwo Twelveという名前の会社です。空間・環境に関するグラフィックデザインをやっています。例えばサイン、インテリア、屋内だけでなく屋外のものもやっています。数年前に持続可能なデザイン会社になろうとこの会社は決め、最初にやったことは、自分たちの持続可能なミッションステイトメントを作ることでした。

そして、アウトリーチにあたって、このミッションステイトメントに対して自分たちがやっていることを外にどう示すかということであります。このパンフレットには、この会社で行うべき大切なことはこういうことですよ、ということが書いてあります。このようなしっかりとしたミッションステイトメントを持っていますので、two twelveは持続可能な仕事をするデザイン会社として、国連やニューヨーク州に売り込むことができ、同じような考えを持っているところと協力することができることになります。

持続可能なデザイン会社になろうとすれば、外部の人だけでなく、従業員に対しても語りかけなければいけません。これだけのことをやっている、と、教えなければなりません。デザイン会社というと1〜2人の会社と思われるかもしれませんがしかし30〜40人も働いているデザイン会社もあります。中にはデザイナーもアシスタントやサポートする人もいるわけであります。同じ会社で働く人全てに同じ意識を持ってもらうよう、常に教えていかなければなりません。自分たちは何をやっているか、オフィスの中にどういう経過があってどういう結果がでているか、我々のオフィスでこれだけの節約ができた、ということを教えて行かねばなりません。企業の中で自分たちがこれだけやっている、ということを示すことができます。

two twelveはもっと環境的に意識のある会社になろうと思ったわけでニューヨーク市の仕事ももらうことが出来たし、多くのアメリカの市町村などにおいてもこのような。two twelveのミッションステイトメントを受け入れてくれるところで仕事ができるようになりましたのでこのような持続可能なやり方をすることによって仕事が増えたということです。

こちらはNau(ナウ)という、新しい会社です。これも持続可能なミッションを持ったアパレルの企業で、ハイパフォーマンスな衣服を作っている会社です。ニューヨークにあります。この会社の場合は、原則を持って設立されました。デザイナーは全てのことに関与しました。店舗を作る時、webサイトを作る時、洋服の解説の札など、すべてに関わっています。そのことにより、この企業は他と差別化していることを示しているわけです。ハイパフォーマンスの衣服を売るという時には、同じような価値観を持った人に、顧客として売り込まなくてはなりません。同じような考えを持っているところにストーリーを展開しなければなりません。ただ洋服を作っているだけではありません。例えばより良いリサイクルされた糸であるとか、自然素材の染色を使っている、ということを語り伝えねばなりません。消費者に、自分たちのストーリーを展開していくのです。この企業はなぜ他の企業と違うのか、どう違うのかということが、顧客がきちんと理解できるように、例えばこのインテリアに設置されている小さな解説の札からストーリーがでてくるわけです。具体的にどういう形で環境に優しい商品が作られたか、そしてこの衣服はどのような形で作られてきたかということが書いてあります。消費者で持続可能性を信じたい、材料、製品の作り方に関心のある顧客に的を絞っている訳です。このようなストーリーを展開しなければ他のところと同じように見えてしまいます。デザイナーが最初から関与して、差別化をしています。この衣服も会社も付加価値があり、差別化されているということです。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント
出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

4 「問題解決」

問題解決というのは、デザイナーがいつもしていることですが、質問をし、再び考え直すと、していることを問い直してみるという事です。将来のためのデザインをいつも考える事です。今日の問題を解決するだけではないのです。例えば、材料や生産がよりよくなるにはどうするか、ということを考えなければなりません。

マイケル・ハートさんは、このパッケージのデザイナーですけれども、フランスに住んでいます。デザインの教授ですが、新しい解決として、学生とともにライフサイクル分析をすることにいたしました。こちらはジャガイモのパッケージの例です。これは先生の学生である、ノルウェーの学生がやったということですが、バイオニックス、バイオテクノロジーです。微生物を活用しています。パッケージされているジャガイモの寿命と同程度しかパッケージが保たないということです。ジャガイモは2ヶ月しか保たないのに、バッグは何百年も残るということはなくなるわけです。微生物を活用し、ジャガイモが食べられる期間だけ、袋もいきているということです。ジャガイモが食べられたあとは、袋は分解され、腐葉土となる、ということです。学生がこういうことまで考え、ライフサイクルまで考えてデザインをするということはいいことは、とてもエキサイティングです。今すぐにできなくとも、将来を見据え考えるということも必要です。ジャガイモの入れ物をつくった人はやがてバイオテクノロジーの研究者と協力して10年後には実現するかもしれません。

2年間をかけてデザイナーがサステナブルな仕事をするにはどうしたら良いかを追求してきたと申しました。

色々な方とお話してきました。そして、いろんなことを考えてきました。より具体的なデザイン。製品のデザインをしているインダストリアルデザイナーではなく、グラフィックデザイナーは、インダストリアルデザイナーとは異なった仕事をしている、建築デザインとも違う仕事をしている、それぞれ個別のデザインという領域もあります。

そして、デザインの仕事をするとき、アウトプットが何かだけを考えるのはますます無意味になってきていると思います。インダストリアルデザイナーと建築家とグラフィックデザイナー、みんなが一緒に仕事をする、一個一個の者が自己簡潔しない時代だと思います。ですから、デザインのそれぞれの位相に、ことなることを問われていると。

丁度今時期の去年ですが、東京に来ることがあり、去年のエコプロダクトの展覧会に行った訳です。日本語ができれば、ずいぶん違った楽しみがあったと思います。単にブースや製品をみて、勝手に自分で思いを巡らすだけでなく、いろいろお話ができるのは大変いいことだと思いますが、けれどもわたくし自身、ものをみる、人々がみているものを見る、あるいは、人々が見ている姿を見るというのも、私の仕事の一部だと思っております。いうまでもなく言葉がわからないということは、人が何かをみている、そして、次に、何かを見る、という、それぞれの理由は私には自明なわかではないわけです。何度もそうやってみていく、そして、目の前で展開しているストーリーと言うものに、想像力を逞しくして思いを馳せると。去年、丁度、ある学生さんというか、若い人が、私のもとにやってきて、翻訳を手伝ってくれる、という人だったのですが、大変面白い人でした。

ここで私が考えた事は、人々、素材、エンジニア、製品デザインの専門職の人、全部が修練してひとつのサステナブルな持続可能な何かを作ろうというわけです。これは、異なる立場の人があつまって、サステナブルな物語を語ろうということがあります。

多くの製品は将来を変える、あるいはより持続可能な社会に貢献するものであってほしいと思います。グラフィックデザイナー、視覚的なコミュニケーションを専門とする人であれば、その製品と、その素材、商品と素材ということを考えた時に、非常に重要なテーマがここにあります。建築ももちろんそうです。

セバスチャン・ゲリー二さん。アルゼンチンのブエノスアイレスを拠点にしているグラフィックデザイナーです。アルゼンチンにおいて、グラフィクデザインの関わることとして一番多いのは、印刷でしょう。印刷用の紙というものが重要です。しかしながら、デザイナーたちは作品や自分のメッセージを、そのようなリサイクルされた紙やリサイクル可能な紙で印刷を用いて伝えられているかというと、そんなことは簡単ではありません。というのは、費用が高いということがあるからです。

彼はデザイナーとして、その物語をしたいと。建築家とか、そのほかの人と彼は仕事をした訳ですけれども、エコロジカルな素材を使い作品を作りました。非常ににいいデザインです。そのときの素材の問題ということ、そのインパクトの重要性ということをよく知っています。

例えば、これは本です。建築の世界がもとになっておこなわれた展示会のカタログです。ここに登場する建築家たちは違う思想で、それぞれ想像して材料について考えてきている人たちです。左のものですが、理学的な感じがします。このままではやわらかい面白さを感じるものではないかもしれません。ただ、このような特色は、一体どういう場所だろうと、リサイクルステーションなわけです。このようにゴミを集める、集積する場所を示唆するわけです。そこにさらに、対になるかたちで、非常に具体的なこの世界で、いやでも目につくものをいうのを対置して使っています。建築の計画でも、実際の建造のプロセスに置いても,建築授業でありながら、他のビジュアルな視覚的なグラフィックデザイナーならではの表現も借り、建築意図というものをつたえる努力をしているという一例です。サステナブルなかたちでこういうものをやっていくというためのひとつの努力のありかたの例です。この業界自体をかえていければと希望をもってやっている仕事です。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

5 「持続可能なコンサルティング」

もう一つの分野ですが沢山のデザイナーが作業しています。アメリカでは少なくなくともそうです。企業がやってきて、サステナブルなコンサルティングを求めてくる。最初に始めたのはデザイナー達ですが、こういったサービスを必要としている人は多く、アメリカにおいて、企業がどういう立場にいるかというと、政府よりも、企業がむしろ先導してサステナブルなことを求めておりまして、民間企業が以上に必要性を強く感じているわけです。他の国だと大学が先頭に建っている場合もおおいですが、アメリカでは民間企業が一番多いです。多様な企業です。よりサステナブルな実際の実践を積み重ねたいというわけです。NGOがその企業に対して批判をすると、そして結果として、なんらかの持続可能性をより尊重する、ということで、コンサルテーションを求めてくると、いうことはもちろんあるわけですけれども。どうやってそうやったらいいでしょうか。

援助が必要です。今の政府はリーダーシップほとんどないし、アカデミズムもそれほどのリーダーがいないと、それにかわって、サステナブルなコンサルティングというものを、鋭利、非襟問わず提供せねばならないということです。デザイナーがまさしく先頭に立ってこう言った仕事をやる。そういう時代に入ったと思います。少なくともアメリカにおいてはそうです。大きな企業もそうですけど、小さな企業も相談を始めようと、多様な業界に置いていえることです。またここでも物語性ということが出てきます。持続可能性な将来をつくること時代、組織の使命でもあります。それを追求する時、どういうつもりで自分たちがこういうことをやっているのかということを伝えることも重要です。

これは製品デザインの業界ですが、皆さんご存知の金融コンサルティングの会社ブルームバーグ、アメリカのニューヨークに本部があります。非常にアグレッシブな環境政策をとっております。新しい封筒、レターヘッドなど、新しいイメージづくりに乗り出しているわけですが、そうなると、使わなくなった封筒、名刺などが出てきます。まだ使い切っていない、古い物はどうするのかという問題がでてきます。新規の軸が動き出しているし、新しい姿勢を打ち出した新しいものも使いたい。新しいものを使いたいけど、過去のものをただたんにすてればいいというものではない、と考えました。そこで、Mioという、会社は動き出しました。使えない名刺、封筒、そういう使わなくなったものでつくったスツールです。個々のスツールにはタグがあり、これはどうしてここにあるのかを説明しています。

もうひとつのところ、Viola(ビオラ)。これはエコグラフィックデザイン、であります。大学の出版界が環境への配慮を実現しようと、大学が日本ではどうか知りませんが、アメリカですが、私のように教えている人間でも、学生でも、沢山の郵便物を大学からうけとります。大学というのは沢山の郵便物を生み出し流通させている元凶ともいえるわけですが、ありとあらゆるものが、毎日沢山きます。もちろん、重要なものがほとんどの場合そうですが、しかしながら、それだけではありません。資源を無駄に消費しない、サステナブルなプロジェクトを教えていかねばなりません。デザイナー、特にグラフィックデザイナーは、我々が作る具体的なものだけに関心を持っていたかもしれません。例えばこのような小さな折りたたみ式のカードですが、それだけだったら大変な仕事ではないかもしれない。しかし、デザインはものだけを作って終わるのではなくて、デザインを支える考え、アイデアというものをもっていなければならなりません。アイデアに対して、報酬が支払われるということにならなければならない、という時代です。大学においても。例えばただ単に物が生まれてくれば良いのではなく、どの分野であれば、より廃棄を省けるか、どこだったらより合理化できるかということを考えることも、デザイナーの仕事ではないかとゆうことです。で、もちろん、上司、クライアントにこの考えを伝えていく事です。具体的につくることよりも、考える事のデザインの仕事だといっていいかもしれません。

これは、アニュアルレポート、年次報告書のデザインです。6x6インチというサイズです。企業ですと、年次報告書というと、乗せねばならない資料、財務報告そのほかの書類が掲載せねばならない、図やグラフも沢山はいっていて、ページが多くなります。

しかし、これの場合は、そうではありません。こういう情報をかいておく、ということ、デザイナーが、しばしば、グラフィックデザイナーが、使う素材を少なくしようと考えると、仕事も少なくなってしまい、それでは商売がなりたたないわけです。従って、アイデア、コンセプトというものに力を入れて仕事をすること。デザイナーはこれからますます、そういう役割を担っていかねばならないわけです。それぞれのクライアントの特色という者でありますが、それにもっとも適した者を提供していかねばなりません。従って、ただ単に材料を少なく使えばいいという単純な問題ではないのです。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント
出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

6 「新しいマーケットを生み出す」

最後に、お話したいのは、デザイナーが新しい市場をつくるという点です。特にグラフィクデザイナーの場合、しばしば、色々な仕事を頼まれます。仕事にあたってブリーフィングをうけると。そして自分のアサインメントの中身を知って行く。自分としては新しく経験する市場に登場する。ほかにも経験のある人がいるかもしれない、いないかもしれない、例えば、テーブルランプを作っている人だからテーブルランプについて勉強しよう、それだけでいいのか。ということです。

トライサイクルという会社の新しい市場作りの例であります。これはデザインのコンサルタントの会社がやった仕事ですが、その地域の特色を、そしてこの地域でやるのであればデザイン的にどういう特色が大切かということを調査しました。アメリカの南東部です。

大きな産業があります。例えば、カーペットのサンプルを作るところもあります。インテリアデザイナーが、この店舗にはどのカーペットにしようかと考える時、何百という膨大な数のサンプルを見なければなりません。カーペットのサンプリングを通じて生じている無駄とはなにか? と、彼ら自身がこの場所の調査をしていきました。サンプリングのプロセスだけでもこれだけのものがでてくる。何か省けることがあるか、みていったわけです。

カーペットをコンピューターシミュレーションで見る。これは非常にリアルですこの展示ですが、アメリカのトレードショーでそして、カーペットのサンプリングでどれだけ無駄が多いか訴え、関係を改善する事を提案しています。

カーペットの製造業者が興味をもたなくても、インテリアデザイナーはしょっちゅうこういうことをやっていますから、いかに今まで通りのやりかただと無駄が多いかということを訴えて、カーペットの製造業者は、新しいやりかたをすることで大変成功をおさめました。また、トライサイクル社もサンプルシステムのみならず、webデザイン、コンピューターシミュレーションデザイン、展示、製品デザインコンサルティングなども行い、会社としての仕事の範囲を大変広くすることができました。

ムードという会社のサンプル帳です。これは、シミュレーションです。昔のバインダーがそれぞれの会社には沢山あると。古いバインダーに我々の使っているステッカーを貼ったらどうでしょうと、ということです。このようにムードと描いてあります。使い方を教え、再利用のかたちになるわけです。

最後になりますが、サステナブルデザインの仕事で面白いのは、一方通行の仕事ではないと言う事です。ただたんに、一方通行ではなく様々な問題、あらゆるタイプの問題に解決するに当たり、それぞれのやりかたが異なります。様々なやり方をせねばならないということです。

物語、あるいはコラボレーションというのは、これからのサステナブルなデザインの方向性に描かせない要素という事は明らかなわけですが、そこではより具体的に、どれだけデザインの戦略を使ってゆくかという事も重要です。このあとも、明日からの分科会で、色々話し合い、見る事ができる事を楽しみにしております。ありがとうございました。

出典:アアリス・シェリン氏講演パワーポイント

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