これからお話するのは、私達が掲げたビジョンについてです。私が手がけている仕事ですが、先住民の文化を国のアイデンティとして表明しています。具体的にはオーストラリアの国旗のデザインワークです。
皆さんエド・フェラーさん(Edward Fella)をご存知でしょうか。アメリカ人で、カルフォルニア在住のデザイナーでありイラストレーターです。オーストラリアに招待して、三か月滞在されました。彼は、オーストラリアと米国には「類似の相違性と相違の類似性がある」と言いました。
これが現在のオーストラリアの国旗です。ここで支配的な影響というのは、言うまでも無くユニオンジャックです。実は国旗ではなく植民地時代からの旗だったのです。祖始国である英国の国旗があって、この地域のシンボルとして星が描かれています。実際今のオーストラリアは、どちらかというと英国よりも米国に影響を受けていますので、グラフィック化するなら米国の国旗を掲げた方がいいのかもしれません。しかし、私たちとしては独自のアイデンティティを創出し、今までのブランドから脱却して、新しい国旗をブランドとして再構築したいと考えています。
例えばインドは植民地時代のものから現在の国旗に変更しています。カナダにおいても1965年に変更しています。南アフリカや香港は最近変えました。そしてニュージーランドも現在国旗を変えようとしており、こういう国旗になるかもしれません。
そしてオーストラリアは、私がデザインしたものでありますが、願わくはこういう国旗になればいいと思っています。その国を支えるアイデンティティを考えれば、私どもは英連邦の国でありますが、それぞれの国において国旗があるべきです。植民地時代から引き継いでいますので、なぜ変える必要があるのか、と思う人がいるかもしれません。ハロルド・トマスというデザイナーがいったことですが、現在のオーストラリア国旗は結構カッコイイのですが、先住民としては気分がよくない。というのは英国の国旗は侵略を意味します。しかしユニオンジャックの部分をなくすとユニークさが足りない。そもそも南十字星はオーストラリア以外でも見られるので、古典的なシンボルであるカンガルーを使ったらどうかと考え、シンプルにデザイン化しました。カンガルーが飛躍するイメージを表現しています。先住民に調査をしたところ色が気に入らないという意見がありました。それならば先住民の国旗と同じ色にしたところ、結構さまになったと思います。先住民の方々は好きだといったわけですが、オーストラリア全体を考えるとちょっと先住民色が強すぎるということで、再度色の変更をしました。こちらは多くの人に受け入れられているようです。
国旗のデザイン過程で発見したことは先住民の問題とともに、先住民ではない人もオーストラリア人であるということです。オーストラリアは多文化で多様な人々が住んでいます。もともとは英連邦の前に英国の植民地だったわけですが、様々な移民が、ヨーロッパやアジア、アフリカから流入してきました。ですからこのイメージが文化をよりよく表していると思います。
こちらは、先住民のアーティストのよる作品です。先住民アーティストは少数ですが、世界の文化をみてもアートとしては最も古いものの一つで、4万年前から引き継がれたものです。ペンで描かれた作品です。
こちらは作家ジャーメーン・グリーア(Germaine Greer)のコメントですが、「先住民を受け入れることはオーストラリアが国として立脚する唯一の方法である。」というメッセージはなかなか面白いと思います。
こちらの紙幣は、ゴードン・アンドリュース(Gordon Andrews)という人のデザインですが、先住民の芸術を相談なく模倣したということで、当時批判されました。アパルトヘイト的な考えを持つ先住民の人達が、こんなものは使えないと拒否していたものです。
こちらはデビット・ランケッシャー(David Lancashire)の作品ですが、先住民の芸術表現うまく行っている数少ない事例です。長年に渡ってこういう作品を作っていますが、先住民的表現を偏見なく使っています。彼は19歳の時に英国から来ましたが、新しく流入してくる人の方がかえってオーストラリアの土着文化を正確に捉えているように思います。
こちらは先住民の旗です。ハロルド・トマス(Harold Thomas)がデザインしました。こちらは南アフリカの国旗ですが、フレッド・バンウェル(Fred Brownell)がいわば和解の旗としてデザインしたものです。
こちらは古い国旗ですが、新しい国旗のデザインは2つの緑のラインが収束して一つになったことを表現しています。オーストラリアでも和解の旗は先住民の旗として、例えば高校などでも掲げて受け入れられています。
キャシー・フリーマン(Cathy Freeman)という陸上選手は、この国旗の問題を顕示し、解決に向けて行動しています。彼女の素晴らしい業績として、イギリス連邦の陸上競技大会において金メダルを取った際に、一つの旗だけじゃ嫌だということで、オーストラリアの国旗と先住民の旗を両方掲げたのです。多くの人達向けて、オーストラリアは二つの旗が存在することを顕示しました。2000年のオリンピックで金メダルを取った時も同じでした。彼女は二つの旗を結びつけたのでとてもシンボリックだったと思います。先住民の旗とオーストラリアの国旗を結びつける和解の旗という意味です。現在のオーストラリアの国旗からデザイン要素を抽出し、色は先住民の旗から引用すると、和解の旗が生まれるかもしれません。また、和解の旗の色を現在のオーストラリア国旗と同じにすることで、新しい国旗が生まれるかもしれません。国旗をデザインするというのはつまり、ビックブランドをデザインすることです。
こちらは私どものモナシュ大学です。モナシュのデザイン棟でギャラリーもあります。2000年シドニーのオリンピックと2006年メルボルンコモンウェルスゲームズのデザインワークを展示してもらいました。
これが2000年シドニーオリンピック、こちらは2006年メルボルンのデザインワークです。私たちの研究成果である2大会のデザインワークを振り帰って、カラーリングが大変重要であることが分かります。シドニーオリンピックの時は非常に多くの研究を行いました。オーストラリアの色とは何か、ということを見つけようと努力しました。そして私のデザインを採用頂きました。
これらもデザインワークの事例ですが、多くの準備をしたことをお分かりいただけると思います。最終的にうまくいったと思います。シドニーオリンピック時の研究において、オーストラリアは日本と同じ島国であり、水に囲まれていますので、海を表現するブルーが大変重要であることが分かりました。そして黄色というのはシンボリックな色彩としてうまくいったように思います。太陽やビーチを表現する色ですし、先住民の旗にも使われていますので、黄色を効果的に用いました。
こちらはシドニーオリンピックのデザイン・アイデンティティマニュアルです。
こちらはデュフィーワールドワイド(Duffy Worldwide)のデザインワークです。バハマ諸島のカラーデザインですが、一つのデザインをベースにバハマ諸島のそれぞれの色を文化の多様性を表現しているわけです。
同じように新しいオーストラリア国旗のデザインでも考えました。州によって色を使い分けています。ニューサウスウエールズ、クイーンズランド、南オーストラリア、タスマニア、ビクトリア、それぞれの色を使いました。デザインは統一し、色で多様性を表現することを考えたわけです。そういったカラー展開を、例えば空軍、海軍、ライフセーバーなどにも使いました。
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