(C) Rei Kubo

質疑応答

Chapter

質問1 活動開始にあたっての障壁をどう超えるか
質問2 環境技術とスピード 本当にエコロジーとは
質問3 悲壮感をどう克服するか

質疑応答

質問1

活動開始にあたっての障壁をどう超えるか

質問1:今日一日、皆さんのお話を伺って、本当に明日にでもサステナブルデザインの活動を開始したいと思いました。この会議に参加なさった皆さん同じだと思います。ただ、壇上に上がっておられる方と、私どもの違いといいますか、障壁があって行動を開始できない、スタートをきれない、ということがあるかと思うんです。そういったサステナブルデザインの活動が経済的に、自分たちの生活を支えていくような経済的な活動にならないということがもしかしたらあるのかなと思うんですが、講師の皆さんは、そういった活動をスタートされる時点で、何か障壁があって、それを乗り越える事があったのでしょうか。

星川淳氏:私はお話ししたように、デザーナーという枠にあまりはいらないので、サステナブルデザインを始めたのが何時どんなきっかけかと考えても思い浮かばないのですが、今おっしゃたことを聞いて考えたのは、いつもやっていること、経済活動がサステナブルな活動に結びつかないという事ですが、より良く、より深くやるということがサステナブルデザインの第一歩だと思うんです。すごく難しいことをやろうとするよりも、自分の持ち駒から何をやるかと、そういうことをよりよく、より深くやると経済活動にも結びつくのではと思います。そのように考えたらどうでしょうか。

ラッセル・ケネディ氏:私の方からもデザイナーとして考えますと、我々は解決策を考える、優れた回答を求める人なわけです。従って当然最良の解決策にいたるプロセスにおいて、持続可能性という問題は我々が物事を判断する一環であり前面にでてきます。何をやるにせよこのテーマは出てくるわけです。サステナブルであるか否かによって、未来は影響を受けるわけです。サステナブルデザインはこう、ほかのデザインはこう、というふうに違いがあるわけではないですね。サステナビリティということ自体が優秀なデザインの重要な要素であるわけです。

トム・ジョンソン氏:私もそう思います。それぞれが皆、自分のクライアントと仕事する時、常に自分の頭の中で対話をしながら、そこには必ず、それに関連することが結びついてくると思います。自分自身の独自のプロジェクトだとしてもつきまとうでしょう。あなたの場合、サステナビリティというのは重要なテーマになっていて自分の考えを述べる時、コメントを述べる時、あるいは展覧会でもそうです。

インデックスというグループがあって、展覧会をやったことがあるんですが、かつて一度、批判されたことがありました。すばらしい受賞作品を輩出していたんですが、プロトタイプに賞を与えるということがありました。プロトタイプと言うのは製品化が決まっているものに賞を与えるということがありました。しかし、このような分野ではアイディアが優れていること、それが全てを決めるものだと思います。

アアリス・シェリン氏:一つ申し上げたいと思います。まず、時間ですが、普通の仕事を受けてデザインスタジオで、説明を受けて仕事にかかろうとブリーフィングを受けるわけです。このぶりーふぃんぐの時、社会的意識とか、サステナビリティに関してどのようなレベルの意識を持っているかということが試される、見られる、あるいは審査されるという面があります。

それから次に本当にこの数年間の物事をちゃんと捉えているか、特に若い人の動向を捉えているか、ちゃんと把握されているかということも見られるしょう。

最初の取っ掛かりは小さくても、側面的なところからしか始まっていなかったとしても、グローバルネットワークのようなところ、その他でもよいですが、非常に驚くべき事にこの業界というか、共同体というコミュニティは大変に人にやさしいというか、人に物事を与えて、そしてともに仕事をするというのが非常に徹底しているように思います。デザインにサステナビリティということが強調されているという事は当然仕事をやる実践の場面でもそういうことがあるわけです。

質問2

環境技術とスピード 本当のエコロジーとは

質問2:トム・ジョンソンさんに伺いたいのですが、最近、例えばハイブリッドカーだとか、新しい技術のものが出ているわけですが、世界中の車がトヨタのハイブリッドカーになったら果たしてそれはエコロジーになるのかな?と思うわけです。あれだけ燃料電池を沢山造って、中国の人も皆乗って、本当にエコロジーなのだろうかと思うのです。

自分も電気製品のデザインに関わってきたのですが最近そのスピードが速くなっている気がします。新しい技術、小型化、そういうことで加速している中で、どうやってサステナブルにしていくかと思います。

ヴァージンアトランティックはで、バイオ燃料でと飛ぶ飛行機ができましたが、その燃料を作るのに実際はかなりのエネルギーを使うということです。エコロジーと言われているものなかなか実際やってみると実際エコロジーではないという現実が見えてきているように思います。その辺りのことをどのようにお考えになっているかとお聞きできればと思います。

トム・ジョンソン氏:難しい質問をいただきました。聞いてくださってありがとうございます。そうですね、おっしゃるとおりだと思います。

「常識」ということを駆使する事で事実を見極めて行く必要があると思います。

ただ単に一つの技術を別の技術で代替させても、生活パターンが変わらない限り、結局は本当の問題に対応したとは言えないと思うのです。例えば、アメリカですと、今もなお自動車が主たる交通手段であるという状況です。これは必ずしも効率的な手段だとは思えません。アメリカの都市ではどうしても公共交通網が整備されていないという状況がありますが、マイカーで移動するという生活スタイルを続ける限りは、いつまでたっても公共交通網の整備が進む事はないと思います。質問者の方がおっしゃられたとおり、私自身、技術の進歩に付いては興奮を覚えます。自然界からなるべく汚染することなく如何にしてエネルギーを作り出すかという技術についての進歩には、わくわくはしております。

私どもとしても学習曲線が速いこと、いろいろな課題があって、課題があるからこそクリエイティブになれるということで、デザイナーだろうととてつもない問題に関わってはおります。にもかかわらず、その新しい社会にというものがどういうものになるのかわかりません。自分にとってはまだ驚きの想像ができないんですけれども、そこで何かでてくればと思います。

質問3

悲壮感をどう克服するか

質問3:日本でサステナブルというと悲壮感が漂ってしまうのですが、欧米の方はそこに悲壮感というよりも、それを楽しんでいくような、心構えが感じられます。日本人と欧米の方と根本的に考え方の違いがあるかとも思うのですが、どうやったら楽しめるような視点を持てるのかということを外国からいらした皆さまにお聞きしたいです。

アアリス・シェリン氏:大変興味深い視点ですね。持続可能性が国によって考えかたが違い、アプローチをも違うということですね。私もいろいろな外国にいきますと、サステナビリティを動かしている人が国によって違うということを感じます。

悲壮感を持たず前向きに考えるかですが、アメリカでは、私たちは希望を持っていると思います。サステナビリティへの取り組みが、今、始まったばかりだからだと思います。進んでいるとはいえませんし、第一線にいるのは他の国の皆さんだと思います。私たちよりもずっと前に進んでいる皆さんが沢山おります。

サステナビリティのプロジェクトにずっと関わっていると、いかにこのプロジェクトが大きいことかということに気がつくと思うのです。でも、毎日の仕事において、ほんの少しでも一歩前進するということが大事だと思います。アメリカでは私に希望を持たせてくれるのは大学の学生たちが、私の予想を超えて、このテーマを前向きに捉えているということなんです。彼らはこのことを大事に考えています。私たちとしては、これからも次の世代への種を植えていきたいと考えているのです。私たちだけでなく、よりよい将来を持つためにもがんばっていきたいと考えています。

トム・ジョンソン氏:私はアメリカに住んでおり、アメリカに対する私なりの見方がありますけれども、その見方は、アメリカ人以外の見方とまったく違うと思います。同じように、質問者ご自身の日本という国についてですが、日本はサステナビリティに関心をもち、歴史も長く実績があると思います。その中において、悲壮感どころか、もっと将来のことを期待してもいいのではと思います。私がインターネットを見ているとき、面白いと思うことの中に、日本発というものが結構多いのです。

日本という国がそのただ中にいるが故に、いかに自分たちが他の国に対して影響が大きいか、いかに日本がリーダーであるか、ということがわかっておられないではと思います。そのただ中におられるので、ご自身が見えないのかもしれません。

今日、ここで素晴らしいことを日本でなさっていることにも、私は非常に興奮を覚え、ここで見聞きしていることは大変楽しいです。多いに胸をはっていただきたいと思います。

ラッセル・ケネディ氏:一点、付け加えさせていただくのは、日本に対するイメージは2つあります。東京のような大都市、そして、伝統的な日本文化です。日本に来てから多くの寺院にいっておりますが、そういったところを訪れると、いかに和を大事にしているか、伝統的に和を尊んでいる国かということを感じます。和を尊び、人が自然と建築、庭、庭と住居との関係、バランスと調和などの日本の文化です。もうすでにあるじゃないですか。そういう事例がまわりにあります。調和を楽しむ事。後ろを振り返ることで前進できることもあるのではないでしょうか。

星川淳氏:今の質問の件ですが、悲壮感というのは仕方がないと思うんです。現場を知ったら、それは悲惨なことが沢山、世界中にあるわけです。人間的な要素も、自然の要素も。でもそれを、デザイナーとしては、その悲壮感の現場も踏まえながら、どうやってクリエイティブに解決してゆくか。創造性というのは、宇宙の持っている根本的な力、ドライブだと思うのです。いかに創造的にソリューションを見つけていくかということが仕事だと思います。それはわくわくする作業だと思います。

日本の希望としては、日本人とあまり一括りにできないですが、何か一つの方向性、これが大事だということが共通の認識になると、ものすごい力を発揮すると思うんです。

今はまだそれが、散らばっていて暗中模索な状態だと思いますが、もう少し状況が、ひとつの方向が見えてくると、クリエイティブになっていくしかないと。日本人の持っている力、繊細で洗練していく能力を持っていると思いますので、そこは世界に貢献できる事だと思います。

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