各分科会からの提言

B -4「コミュニティ:「お金に使われない社会のつくり方」

(C) Hiroshi Homma

Chapter

はじめに
ディスカッションの内容
問題解決のための具体例(堀内良樹さん)
結論と考察(井口道代さん)

プロフィール
プレゼンター:小野 加瑞輝・井口 浩・井口 道代・堀内 良樹(NPO法人ミレニアムシティ)

はじめに

今回はお金についてディスカッションを行いました。具体的には最初にミレニアムシティとは何かといった取り組みについてご紹介し、その後お金が使われることについていろいろな問題があるわけですが、世界的に我々の使っているお金よりもはるかに多くのお金が流通している原因は何かということを簡単にご紹介いたしました。その後「環境問題の元凶を探る」というテーマで3つのグループに分かれてディスカッションを行い、いかに我々がお金に使われているかということをみんなでシェアしました。最後に、お金に使われない生活とはどういうものかということを2050年の未来をつくりながら考えるということで2050年と2024年それぞれに向けて今年と来年は何をしようかというような方向性で議論を進めてまいりました。。

ディスカッションの内容

色々な環境問題を辿ってみようと言うことで、様々な環境問題があるので選んでくださいと言ったのですが、たまたまどのグループも食料問題になってしまいました。日本の現状として、食の安全性や、農家が大量に供給しそれを企業や農協が助長していること、消費者も安全よりも安いものを買うという、企業は儲けたいが消費者は安いものがいいという点が一致していることが今の日本の食料問題なのではないかということでした。原因は「儲ける」「安い」といったお金に関わるものなのではないかとういう意見が挙げられました。やはり食料を輸入や政策に頼っていることが問題で、富みへの幻想や、コストの問題に関わってきます。そして探っていくと結局はお金の問題になっていってしまいます。3つのグループともディスカッションした中で我々や環境問題はお金に支配されているということになりました。逆にいうと、我々の生活すること自体が環境に負荷をかけてしまっているということです。

次に、いかに我々がお金に使われているかということを、仕事の面と生活の面で実体験を話してもらいました。仕事をしていても、環境に良いとわかっているがどうしてもコストのほうが優先になってしまう、生活のために仕事をしなければならない、年収が自分の価値になってしまっている、何をするにもお金がかかってしまうという意見が出ました。それから特に問題だと思ったのは学生に夢がないということです。学生に限ったことではないかもしれませんが、我々はお金に使われてしまっています。使われているというのはどういうことかと言いますと、お金がなくなるとに恐怖心があることが大きな原因なので、その恐怖心とは、お金のこともありますし、健康のこと、食料のこと、といったことに対する恐怖心に囚われていることがお金に使われていることなのではないかと思います。

では解決策としてどうしたらいいか。これはミレニアムシティでいつもやっている方法ですが、未来から今を考えるというやり方です。未来から自分はどういう立場でありたいといった夢を作り、それに向かって何をしたらいいのかを考えます。ミレニアムビレッジはこれを10年やってその手法をみなさんに体験してもらいましたが、2050年というともう80歳や100歳になっていて遠い将来のようですが、そこで何をやっているかとなると本当に沢山の夢を語っていただきました。自由に生きている、皆が幸せなのを見て喜んでいる、中には大きなケヤキを守るケヤキじいさんになっているという夢もありました。これはライフスタイルをデザインしたのではないかと思います。2024年ですと、貧困がない、戦争がない、海外で生活している、お金抜きで差さえ合う生活をしている、ワークシェアしている、自分の好きなことをして生活しているという意見がありました。それではお金に使われないで生活するために今すぐにあなたに出来ることは何ですかという問いかけには、かなり現実に近くなり自炊を上手にこなすとかといった意見が出てきて、これは価値観をシフトさせていくことなのではないかと気が付かれた方がいました。一応討論の結論としてはこのようなところです。

(C) Hiroshi Homma
(C) Rei Kubo
(C) The International Conference of Design for Sustainability

問題解決のための具体例

堀内良樹さん:では具体的にどういったものか、1つ例をあげるとロックフェラーがやったウーマンリブ運動が流行しましたね。1つは税収を増やすため、1つは家族を分断する、それによって金融で支配するという運動でした。それではグローバリゼーションの逆のローカリゼーションです。世の中で一番重要な結び付きは家族だと思うのですが、それが今まで分断されてきました。その中で、今までのように支配されない方法があります。それにはパラダイムシフトそのものの考え方や、お金よりも心の充実感といったものも必要ですし、システム的には世代を超えたコミュニティを作っていくとか、食料の自給自足、またそれを全部含めたものとしてエコビレッジのようなものがあります。コミュニティ通貨やライフスタイルのデザインも含まれます。1時間くらいで最後のセクションでまとめたものがこのような図で表されました。

結局デザインというのはライフスタイルを変えていく家族に戻るということだと思います。家族よりも仕事を優先してしまう、家族を壊してまで仕事をしてしまう、ということはお金に使われているということです。お金に使われないライフスタイル、好きなことや仕事をやっていく、家族とのびのび生活する生活というのに我々エコビレッジは取り組んでいます。

(C) The International Conference of Design for Sustainability

結論と考察結論と考察

井口道代さん:私はこの分科会を通して人間という物に感動を覚えました。2時間ですが人の可能性はこんなにあるのだと思いました。最初のセクションでは諦めや、悲しみに支配されていましたが、解決策や未来のセクションになったときには太陽が出てきたような感じがしました。プラスのエネルギーは素晴らしいです。喜びとか幸福とか、こういうものを扱っていくと場の空気が良くなりますし、ポイントはマイナスのエネルギーをプラスにデザインしていくことだと思います。パラダイムシフトデザインの構築を含め、ハードとソフトどちらも必要で、ライフスタイルと建築物双方を実現していくというのが重要だと思います。そのような実物のデザインを世界に示していくことで、非常に遅いように見えるかもしれませんが、実物のパワーで皆さんが出来ることに気がつければ、簡単なことですが我々に出来ることは沢山あります。そしてパラダイムシフトしていき2050年には皆さんがつくっていったような世の中になっていればよいと思います。

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プロフィール

小野加瑞輝

建築家、株式会社エコライン代表取締役、NPO法人ミレニアムシティ理事長。1953年秋田県生まれ、1976年東北工業大学建築学科卒業、1995年一級建築士事務所エコライン設立、2000年環境まちづくりNPO法人ミレニアムシティを理事長として設立。

井口 浩

環境建築家、株式会社井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ代表取締役、NPO法人ミレニアムシティ理事長。1960年東京生まれ。'82年明治大学理工学部建築学科卒。卒業設計において堀口捨巳賞受賞。'84年同大学院修了の後、建築・都市設計事務所を経て'95年(株)井口浩フィフス・ワールド・アーキテクツ設立。国際建築設計競技に3度入賞。環境共生住宅、環境共生集合住宅の設計と環境蘇生型都市計画を行っている。2000年21世紀型環境共生まちづくりNPOとして、NPO法人ミレニアムシティを理事長として設立。シンポジウムやワークショップを多数開催しており、現在会員約250名。

堀内 良樹

有限会社環境サービス 代表取締役(http://www.selfup.jp/)、健康サロン「セルフアップ」経営、ごしんじょう療法師、チャクラコーディネータ、NPO法人生活習慣病予防学術委員会認定指導員の資格を有する。人の幸せに役立つ真実の情報を伝え社会を変えるきっかけを創る事を使命とする社会起業家。

1963年11月29日兵庫県西宮生まれ、東京育ち。日本大学を卒業後、米国ノースランド大学経営学部へ編入し1988年に卒業1989年父が創業する(株)堀内カラーに16年勤めるが、ふと自分の方向性を定めねばと気づき、躊躇無く退職し、環境・健康・平和の活動を選ぶ。以来その分野でのみ仕事を創り出しながら社会貢献活動を続ける。自ら21日間の断食を含む様々な健康法を実践し、自身の健康を取り戻し、「人の健康の自立を支援する」がコンセプトの健康サロン「セルフアップ」を開業。2008年6月に「社会文化功労賞」を受賞。NPO法人ミレニアムシティ 副理事長。

井口道代

介護福祉士、介護予防運動指導員。NPO法人ミレニアムシティ常任理事、ミレバンク頭取。ミレニアムシティの趣旨と介護職経験を通して、オルタティブな暮らし方、特に介護・医療・教育の分断を統合したお金に使われない生き方や暮らし方を提案。それを「ひと楽園」構想と名づけ、その実現に向けてミレニアムシティのメンバーと取り組んでいる。2009年、千葉に建設予定のネットワーク・エコビレッジ「あさひミレニアムシティ」にメンバーと移住しそこで実験的にその構想を行う予定。


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